なぜ今「1.5℃」なのか?
世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えることは、2015年12月に採択されたパリ協定で努力目標として掲げられ、昨年11月に英国・グラスゴーで開催された気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国の事実上の目標とする決意が示されました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年に発表した特別報告書『1.5℃の地球温暖化』(Global Warming of 1.5℃)で示された通り、地球温暖化を2℃以上ではなく、1.5℃に抑えることによって、多くの気候変動の影響が回避できるためです。
この1.5℃目標を維持するために、世界は2030年までに2010年比で二酸化炭素排出量を45%、2050年ごろに実質ゼロにまで削減し、メタンなどその他の温室効果ガスの排出も大幅に減らす必要があるとIPCCは示しています。しかし、昨年11月にUNFCCC事務局が発表した「自国が決定する貢献(NDC)」に関する統合報告書(Nationally Determined Contribution synthesis report)(アップデート版)によると、現時点での各国の温室効果ガス削減目標では排出量が2030年には2010年比で14%近く増加することになります。
この緊急事態には、IPCCによる第6次評価報告書をはじめ、科学の声が強い警鐘を鳴らしています。昨年8月に発表されたIPCC第1作業部会の報告書『気候変動2021:自然科学的根拠』(Climate Change 2021: The Physical Science Basis)では、世界の平均気温はすでに1.1℃上昇しており、この上昇は人間活動による温室効果ガスの排出に起因するという分析結果が報告されました。さらに、 国連の世界気象機関(WMO)は今年5月に発表した報告書『WMO Global Annual to Decadal Climate Update for 2022–2026』のなかで、2022年から2026年までの5年の間に気温上昇が1.5℃を超えてしまう可能性は50%近くと発表し、世界に衝撃を与えました。
深刻化する気候変動は、毎年のように襲う熱波や大型台風などの異常気象や気候関連災害として日本にも甚大な影響を与えていますが、今年2月に発表されたIPCC第2作業部会報告書『気候変動2022:影響・適応・脆弱性』(Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability)によると、今後気候災害が激甚化し、より頻発すると予測されています。
国連環境計画(UNEP)が2020年に発表した『排出ギャップ報告書2020』(Emissions Gap Report 2020)によると、日本は国別の温室効果ガス排出量では世界第5位です。あらゆる担い手が気候変動対策のためのアクションを取って社会システムを大きく変革することが急務となっている今こそ、メディアの力を通じて日本で気候アクションを動員していくことは世界全体にインパクトを持つと期待されます。
SDGメディア・コンパクトとは
2018年9月、アントニオ・グテーレス国連事務総長が31社の創設メンバーとともに立ち上げた「SDGメディア・コンパクト」は、世界中の報道機関とエンターテインメント企業に対し、その資源と創造的才能をSDGs達成のために活用するよう促すことを目的としています。現時点でアフリカ、アジア、米州、オーストラリア、欧州、中東から300社以上がSDGメディア・コンパクトに加わっています。事実やヒューマンストーリー、ソリューション(解決策)を発信することにより、同コンパクトはSDGsに関するアドボカシーと行動、説明責任の強力な原動力となっています。
SDGメディア・コンパクト の詳細はこちらから
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdg_media_compact/
国連広報センターと日本の146メディアによる「1.5℃の約束」キャンペーン、1.5℃という具体的な基準を設けて多様なメディアが生活者に身近でできることを呼び掛けたことがインパクトに #地球温暖化 #SDGs #国連
2022年12月23日
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