- 【04】都市政策の専門家 市川宏雄所長による分析結果統括
東京の不動産へのコロナ禍の影響は軽微で、住宅地は回復傾向が顕著
海外投資家からみると割安感もあり、底堅さの期待は持続しそう今年になって、東京都区部では住宅地が2.2%上昇(前年0.5%)、商業地が2.2%上昇(前年▲0.3%)とプラスに転じました。リーマン・ショックや東日本大震災の影響を受けた2009~2012年の下落と比べ、コロナ禍の3年間の影響は軽微であったことが判明しました。特に都心に近い住宅地、住宅地に近接した商業地で価格の回復が顕著です。
住宅地では中央区、港区、新宿区、豊島区、渋谷区、品川区に加え、良好な住宅地である中野区、杉並区、文京区、さらには荒川区、墨田区、北区など都心にアクセスしやすい区での上昇が顕著です。
コロナ禍での世界の都市と東京を比較してみると、他の都市に比べて東京のオフィス価格下落は一時的でしかも軽微で、回復へのスピードも早いことが分かりました。
マンション市場でも、コロナ禍の被害が甚大であった「ニューヨーク」「ロンドン」では、都市封鎖など社会経済活動の自粛が影響し、マンション価格の下落基調がしばらく続きました。しかし、2021年10月以降オフィス出勤の再開によって都心部に居住環境を求める実需層が広がりを見せ、マンション価格・賃料は一転して大幅なプラスとなりました。同時期に東京でも、一時様子見だったマンション価格も再上昇し、一部地域では賃料も上り坂になっています。
これからの不動産投資で何を考慮すべきか。
混乱の続く世界情勢のなかにあっても、世界の都市ではコロナ感染を組み込みながら社会経済活動再開に舵を切っています。コロナ禍でも根強かった東京都心への人口回帰は再び増加し始め、また、都心のオフィスでの勤務も復活しつつあります。普及したテレワークがどこまで維持されるかによって都心でのオフィス供給のパターンが決まります。
依然として低金利政策を持続する日本に対しては、歴史的な円安も進むなかで、海外投資家からみた投資の割安感は依然として変っていません。世界的なパンデミックでも東京の感染者数が少ない、ヨーロッパのように戦争に巻き込まれる地政学的リスクが少ないなど、安全だという安心感を与える要素も存在していることが大きく影響しています。
これからのESG投資の浸透や、円安、インバウンド投資熱などが続くのであれば、東京の不動産の底堅さへの期待は持続しそうです。<参考資料>
東京都「東京都基準地価格の概要」
東京都総務局「東京都の人口(推計)」
東京都産業労働局「テレワーク実施率調査」
一般財団法人日本不動産研究所「国際不動産価格賃料指数」
三鬼商事株式会社「オフィスマーケット 東京ビジネス地区」
JLL「世界的な金利上昇局面における国内不動産投資市場の今後」2022年9月28日
- 取材可能事項
本件に関して、下記2名へのインタビューが可能です。
ご取材をご希望の際は、グローバル・リンク・マネジメントの経営企画部 広報担当までお問い合わせください。・氏名 :市川 宏雄(いちかわ ひろお)
・生年月日 :1947年 東京生まれ(74歳)
・略歴 :早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士。世界の都市間競争の視点から大都市の将来を構想し、東京の政策には30年間にわたり関わってきた東京研究の第一人者。
現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。・氏名 :金 大仲(きむ てじゅん)
・役職 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役
・生年月日 :1974年 横浜生まれ(48歳)
・略歴 :神奈川大学法学部法律学科卒業。新卒で金融機関に入社。その後、家業の飲食店を経て大手デベロッパー企業に転職し年間トップセールスを達成。そこでの経験を経て30歳の時に独立し、グローバル・リンク・マネジメントを設立。
世界主要都市の最新オフィス・マンション市況にみる東京の安定性~地価回復の今こそ注目すべき不動産投資7大ポイント~|株式会社グローバル・リンク・マネジメント