世界主要都市の最新オフィス・マンション市況にみる東京の安定性~地価回復の今こそ注目すべき不動産投資7大ポイント~ #不動産投資 #グローバル都市不動産研究所 #円安

  • 【03】今後の不動産投資で注目すべき7大ポイント

混乱の続く世界情勢のなか、日本ではコロナ禍の収束と社会経済活動再開の兆し
都心への人口回帰、円安、インバウンド投資熱など、東京の不動産の底堅さに期待

 2022年にようやくコロナ禍の収束の兆しが見え始め、東京の地価は着実に回復を続け、世界主要都市との比較でも東京の不動産の安定性が確認されたところですが、世界はふたたび激動の時代を迎えています。ロシアのウクライナ侵攻による欧州の混乱をはじめ、日本でも急激な円安とインフレに見舞われ、今後を見通すことがなかなか難しい時期でもあります。

 今後、不動産投資を行うに際して考慮すべき7つのポイントを以下に解説します。

1)コロナ禍の収束と社会経済活動の正常化

 2022年7月~9月にかけて新型コロナ感染拡大の「第7波」が全国を襲う一方で、政府は強い行動制限をせず、水際対策の緩和など経済活動を維持する姿勢を示しました。10月には1日当たり入国者数の撤廃や外国人観光客の個人旅行の解禁などのインバウンド需要の取り込み、「国内旅行支援」の再開といった国内観光需要の喚起策に続き、総額39兆円規模の総合経済対策も打ち出しました
 この冬の「第8波」(またはインフルエンザと同時流行の「ツインデミック」)のおそれは気になりますが、政府として、まずは社会経済活動の正常化を優先する姿勢が見られるところは評価されます。

2)東京への人口回帰

 新型コロナ感染拡大の影響もあり、東京の人口は2021年に減少しましたが、2022年に入り、その局面は変わりつつあります。東京都の人口は2022年3月の13,972,039人から4月には13,995,469人と増加に転じ、直近10月時点で14,040,732人と着実に増加しています。東京都区部で見ても2022年3月の9,660,461人から10月の9,720,389人と約6万人増加しています(東京都総務局「東京都の人口(推計)」)。コロナ禍やテレワークの進展で東京から地方への転出が続くとの論調も一部にありましたが、その動きは一過性のものであり、東京にふたたび人口回帰する流れとなったことは確実と言えそうです。

​3)オフィス回帰とハイブリットワーク 社会経済活動が正常化へ向かうなかで、対面コミュニケーションの重要性が再評価され、オフィス回帰の動きが見られています。都内企業(30人以上)のテレワーク実施率も2022年3月の62.5%から9月の51.9%へと大幅にダウンしています。そのテレワーク実施回数も「週1日」~「週3日」が65.9%を占め、テレワークを実施する企業でもフルリモートではなくハイブリットワーク(出社とリモートワークの組み合わせ)を志向していることがうかがえます(東京都産業労働局「テレワーク実施率調査」)。そのニーズを反映するように、通常のオフィスに加え、サテライトオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなど多様な形態のワークスペースの提供が始まっています。
 東京都心5区のオフィス市況は、賃料は低下傾向にあるものの、空室率は6%台前半を推移しており大幅な下落には至っていません(三鬼商事株式会社「オフィスマーケット 東京ビジネス地区」)。都心の優良物件に対する投資家からの取得意欲は底堅いものがあります。経済回復に従ってオフィス需要も高まり、空室率、賃料とも改善に向かうことが期待されます。

4)低金利政策と歴史的な円安

 世界的なインフレ対応のため、欧米は利上げ政策に舵を切り、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)とも政策金利の大幅利上げを立て続けに実施しています。一方、日銀は金融緩和政策を続行し、長期金利の上限を0.25%に抑え込む構えです。この日米金利差の拡大がドル高・円安を加速させ、一時は1ドル=150円を突破、現在も1ドル=130円台後半の円安で推移しています(2022年12月1日現在)。
 この歴史的な円安は、輸入原材料価格や原油などエネルギー価格の上昇を招き、急激なインフレをもたらしています。不動産市場においても、建設工事価格の上昇や、全般的な物価高騰によって不動産購入への意欲減退につながるといった懸念があります。
 しかし一方で、世界的な金利上昇局面のなかで、日銀の低金利政策の継続で不動産購入の借り入れコストが世界でも例を見ないほど抑えられており、日本の優位性が際立っている、との見方もあるところです(JLL「世界的な金利上昇局面における国内不動産投資市場の今後」2022年9月28日)。

5)海外投資家からみた割安感

 かねてから、東京の不動産はニューヨークやロンドン、香港、シンガポールといった世界主要都市の不動産価格より割安とみなされる傾向にありましたが、昨今の為替相場は海外から見た割安感をさらに高める方向に働いています。日本円で不動産価格の上昇があっても、円安の進展によってドルベースでみると上昇幅は限定されます。海外投資家が日本の不動産取得に積極的に乗り出しやすい状況であり、海外勢の投資意欲は当面続くものと見られます。

6)地政学的リスク

 ロシアによるウクライナ侵攻開始から約9か月、未だ戦闘終息の兆しは見えず、混乱のさらなる長期化も予想されます。こうした欧米での地政学リスクの高止まりは、相対的には日本に対する安心感につながり、日本の不動産投資により期待が集まる可能性があります。
 一方で、ウクライナ侵攻の影響による原材料や食料品、エネルギーなどの供給不足は、国内にさらなるインフレをもたらし、円安もさらに進行するおそれがあります。過度に円安が進んだ場合、日銀は金融政策に何らかの修正を迫られる可能性もあります。来年4月に日銀・黒田総裁の任期満了を迎えますが、果たして低金利政策が継続されるか否かが一つの焦点となりそうです。

7)ESG投資の浸透

 ESG、すなわち環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの観点から投資先を判断する「ESG投資」が、すでに世界的な潮流になりつつあります。不動産においてもグリーンビルディング(環境配慮型建物)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などが高い評価を受け、ESGを重視した不動産投資が避けて通れないものとなっています。
 また、米証券取引委員会(SEC)は、今年3月に上場企業に対して気候変動関連リスクと温室効果ガス(GHG)排出量などの開示を求める規則案を、5月に資産運用会社に対してESG投資に関する情報開示の統一基準を導入する規制案を発表しました。これらの動きは、企業の資金調達やファンドの投資においてESGの観点の重視と情報の透明性をより強く求めるものと言え、近く日本にも波及すると考えられます。今後、企業や投資家はESG不動産への選別志向をさらに強めることになるでしょう。

 ここまで7つのポイントを解説してきました。激動の時代は続きますが、日本、とりわけ東京の不動産市場は、コロナ禍の収束と社会経済活動の再開、東京への人口回帰の流れ、低金利政策の継続、円安による海外からの投資の活発化などで、しばらくは底堅い動きが継続すると予測されます

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