空き家が行政代執行されてしまったら|解体費用は誰が支払うの?【アキヤリノバコラム】 #空き家 #空き家問題 #解体 #自治体 #行政代執行 #略式代執行

日本各地で増加する空き家ですが、今「行政代執行」が話題となっていることはご存知でしょうか。2022年7月、千葉県八千代市は、所有者不明で30年ほど空き家として放置されていた空き家の行政代執行を実施しました。八千代市では初めての試みです。2019年に起きた台風で著しい損壊が発生し、このままの放置は危険と判断したため、やむを得ず行政代執行を実施しました。この空き家は解体されましたが、その費用は同市が約110万円ほど負担したとされます。

行政代執行とは簡潔に言えば「所有者が管理すべきところを、行政が代わりに適切な処置を行う」ことを意味します。では、空き家における行政代執行の作業内容とは、どんなものでしょうか。本来なら空き家の所有者が管理を適切に行わなければいけなかったはずが、何ら処置が行われず放置されてしまい、周辺に危険が発生する可能性があるため行政が解体等に臨んでいます。しかし、行政代執行の費用は本来自治体が支払うべきものなのでしょうか。この記事では「空き家と行政代執行」をテーマに、事例や費用の回収などについて詳しく解説します。

目次

空き家の行政代執行はどんな手続きで行うのか

冒頭に述べたように、放置され続けている空き家については放火や倒壊のリスクも高く、本来は所有者が適切に管理すべきものです。しかし、相続人調査を経ても所有者が特定できなかったり、所有者に改善を求めても無視されている場合には、自治体側が主体となり「行政代執行」を進める場合があります。では、行政代執行とは具体的にどんな手続きでしょうか。

1.特定空き家の指定

行政代執行の対象となるのは、「特定空き家」に指定されている建物です。特定空き家とは放置された空き家が倒壊するおそれがあったり、管理が行き届いておらず、近隣住民に大きな損害を与える可能性がある建物を指します。つまり、すべての空き家が特定空き家に指定されるのではなく、危険な状態で放置されているものが該当します。

特定空き家に指定されると、行政指導が開始され、固定資産税も増額されてしまいます。多くの物件はこうなる前に、売却や解体が行われています。特定空き家に指定されると大きなデメリットを所有者(もしくは管理者)が背負うためです。しかし、所有者や管理者が特定できなかったり、行政指導も無視するケースもあります。すると、自治体としては市民生活の安全のためにも、段階を踏んで行政代執行をせざるを得ないのです。

2.行政代執行の開始

危険で管理が行き届いていない物件を自治体が特定空き家と指定した場合、行政はまず、早急に問題を解決するようにと所有者や管理者側に求めます。しかし、無視される場合には勧告し、それでも改善されない場合には命令を行います。2015年の「空き家対策特別措置法」が施行されてから、指導も行政代執行も毎年増加しています。なお、命令に従わない場合は法律に基づき過料の請求も行います。行政代執行は基本的に行政指導を経て進んでいきますが、明らかな危険が迫っている時などは「緊急執行」も可能です。

室蘭市における過料請求の事例

室蘭市では「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、実際に過料の請求を行った事例を公表しています。繰り返し行政指導をしてきた特定空家等の所有者が、措置期限内にしかるべき対応策を講じなかったためです。この事件は法による対処以前の指導も含めると、8回にわたって指導してきた経緯があります。室蘭市は札幌地方裁判所室蘭支部に通知、令和4年1月7日に法違反過料事件が決定し、令和4年1月26日に過料が確定しています。


参考URL 室蘭市 空家特措法に基づく過料事件について

行政代執行は行政指導を繰り返し行い、履行期限を示してもなお改善されない場合、行政代執行法に沿って実行に移ります。

3.費用納付命令

空き家を行政代執行で解体する場合、その費用は一旦行政側が支払いますが、後日所有者や管理者側に請求されます。行世代執行の前には通知が行われますが、代執行に要する費用の見積額が記載されています。行政執行法上、見積額を所有者側に請求することはできないため、解体手続き完了後に請求が行われています。

行政代執行の費用は所有者負担!高額の請求に至る可能性も

行政代執行で空き家の解体・撤去を行う場合、その費用は一旦行政側が立替えますが、その後所有者側に請求します。代執行に生じた実際の額について納期日を設定し、支払い義務がある方に文書で納付を命令します。

支払いに応じなかったらどうなる?

行政代執行にかかった費用を請求されても支払いに応じなかったら、どうなるのでしょうか。この場合、行政側は「強制徴収」ができます。賃金や報酬金、財産なども差し押さえることが可能です。もちろん、この手続きは訴訟などの手続きを経る必要はありません。国税の滞納時と同じで、自治体側の判断で直ちに差し押さえができます。つまり、空き家は特定空き家の認定時からデメリットがあり(固定資産税の増税)、行政指導を無視すれば過料が課せられ、最後には財産を差し押さえられます。所有者側にとって空き家の放置には何のメリットもありません。ご自身で解体を依頼するよりも、割引なども得られず高額の請求が発生する可能性もあります。

略式代執行ならどうなる?費用請求の問題点

空き家問題を行政側主導で解決するために、所有者が特定できないようなケースでは「略式代執行」で解体や撤去ができます。相続人の調査をしても誰が所有者かわからず、近隣住民に聞き取りを重ねても管理者すらわからない場合、危険な空き家はやむを得ず行政負担で所有者がわからなくても代執行をします。略式代執行は空家等対策の推進に関する特別措置法によって新設されました。

略式代執行では支払義務者が特定できないため、費用の回収ができません。ただし、後日義務者が判明した場合には、民事訴訟提起を経て強制執行できます。

行政代執行を受ける前に|まずは適切な管理をしよう

行政代執行は今後増加すると思われ、略式代執行についても増えていくと見られています。略式代執行が多くなればそれだけ自治体は多くの支出を空き家対策に投じなければいけなくなります。そのため、所有者や管理者の特定を強化すると考えられます。「放置すれば解決できる」わけではありません。

行政代執行については財産調査を強化し、義務者から確実な費用回収を目指すと予想できます。行政代執行や略式代執行は、強制的な財産の回収を受ける可能性が高く、所有者・管理者の生活を激変させてしまう手続きです。現在空き家問題に苦慮している場合、早期に自治体に相談をしたり、解体や売却を視野に入れて解決を目指しましょう。

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