京都伝統産業ミュージアム(所在地:京都市左京区 運営:株式会社京都産業振興センター)では、2022年11月1日(火)より、地方独立行政法人 京都市産業技術研究所(所在地:京都市下京区 以下、産技研)が所有している釉薬研究の「テストピース」と、それを学ぶ「京焼・清水焼」の若手職人のものづくりにフォーカスした展覧会「テストピース ~感性とサイエンスが繋ぐものづくり~」を開催する。産技研が実施する伝統産業技術後継者育成研修の「陶磁器コース」を修了した3名の作家の作品を展示するとともに、習得した知識や技術を活かした「ものづくり」のリアルを紹介。また、期間限定でミュージアムショップおよびオンラインショップにて、当展覧会の展示商品をはじめ、研修修了生の作品なども販売する。
「テストピース ~感性とサイエンスが繋ぐものづくり~」会期:2022年11月1日(火)~11月13日(日)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
会場:京都伝統産業ミュージアム MOCADギャラリー
(〒606-8343 京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 みやこめっせ B1F)
入場料:無料主催:地方独立行政法人 京都市産業技術研究所
共催:京都市・京都伝統産業ミュージアム(株式会社京都産業振興センター)
- これまで一般には非公開だった多種多様な釉薬のテストピースにフォーカスした展示
陶磁器の世界では、素地自体の色や素地だけでは得られない表情や色による加飾を”釉薬(ゆうやく)”といわれる表面のガラス層によって表現します。「テストピース」とはその見本となるものです。それらは多種多様であり、テストピースを基に商品開発がなされています。
産技研では、これらのテストピースが約30万個保有されており、その中には産技研が京焼・清水焼のために独自に開発した安全で環境に配慮した京無鉛上絵具もあります。
今回は、そのテストピースの紹介と産技研で陶磁器コースを修了した「高地 佐代子」「廣田 亜紗子」「藤原 芙由美」の3名の女性作家に注目し、「感性」と研究所で学んだ「科学」の融合によるものづくりの魅力を伝えます。
- 今回クローズアップする「京焼・清水焼」の作家たちについて
今回の展覧会でご紹介するのは、産技研の「陶磁器コース」を修了し、現在「京焼・清水焼」の世界で活躍する若手の作家たちです。
■高地 佐代子 Sayoko Takachi |tama10
大阪芸術大学 芸術学部 工芸学科染織コース卒業したのち、「京都府立陶工高等技術専門校 やきもの成形科」修了。手描友禅工房や製陶所での勤務を経て京都を中心に製作活動中。テストピースの目的
お菓子をよりリアルに再現するために独自に陶土の調合実験を行いました。また、スイーツをイメージした作品なので、フレーバーを連想させる色や質感を釉薬で表現するため、求める釉薬レシピが出来るまで実験を重ねていきます。作品コンセプト『お菓子をモチーフにデザインした食べたくなる陶器』
見て楽しい、使って楽しいと思うデザインを心がけています。そういう気持ちが上がるものとして、スイーツをイメージした可愛さを押しに押したデザインを形にしています。作品の最大の魅力であるお菓子は焼き色や質感のリアルさを追求し、実験を重ねて得たものです。お菓子のリアルさにこだわった作品なので、一見そこだけに目が行きがちですが、本体にもこだわりがあり、独自に調合したオリジナルの釉薬を使用しています。クリームやチョコレート、ミント、ストロベリー等スイーツを想定したカラーで釉薬を展開しています。また、マグカップにおいては持ち手に指が通せない形なので、本体カップを軽量に制作し、持ち心地にも配慮しました。■廣田 亜紗子 Asako Hirota
「京都精華大学 芸術学部 陶芸コース」を卒業したのち、京焼陶芸家・三代目 澤村陶哉氏に弟子入り。「京都府立陶工高等技術専門校 図案科コース」修了。現在、京都にある共同工房にて製作活動中。テストピースの目的
自分の中で作りたい作品のイメージや方向性を表現するため、まずはテストピースで実験を繰り返して下準備をし、作りたいものに限りなく近いものができるように取り組んでいます。作品コンセプト『今焼きアンティーク』
ベースは「今焼きアンティーク」(古い伝統的なものに対して、新しく焼かれた焼き物のうち、アンティーク調に表現したもの)です。色々と方向性に紆余曲折はしてきましたが、私自身が作品づくりを通して魅かれるデザインや時代が何であるかに気付き、それらを大切にして表現しています。■藤原 芙由美 Fuyumi Fujiwara|せらみ屋
「京都精華大学 芸術学部造形学科 陶芸専攻」を卒業したのち、「京都府立陶工高等技術専門校 成形科」修了。清水焼窯元・丈夫窯の加藤丈尋氏に師事を経て、芙蓉窯せらみ屋を開窯。テストピースの目的
テストピースとは陶芸作品の制作において、欠かすことのできない実験です。土、釉薬、絵付、どれをとっても、制作してから「焼く」とういう工程を経ることで、全くの別物のような変化を遂げます。その中でも、今回の展示では主に釉薬のテストピースを中心に展示します。釉薬は、焼成前の時点ではただの水溶き原料の粉状態です。それが窯の扉を閉め、1,230℃という未知の世界をくぐって、また扉を開けた時には驚くほど変化しています。灰色の粉だったものが、美しいエメラルドクリーンやアクアブルーに変わっていきます。これらは、初めから上手くいくものではなく試行錯誤の末にたどり着きます。作品のコンセプト『一目惚れして手に取って、使って愛着がわいてくるそんな作品』
今回の作品は、開発したガラス質の釉薬を活かした物づくりがしたい!と言うところから始まりました。今回はテストピースの展示と言うこともあり、釉薬先行でイメージを膨らませました。透明感のある色ガラス釉薬をいかに美しく見せるかを軸に、釉だまりの濃淡、光沢感、金彩との相性、混ざりあう色、流れ方など、こだわりポイントを取り入れつつ、いかに1つの作品に仕上げるのかを試行錯誤しました。そのために、成形の仕方や土の選定、装飾を工夫しました。
- 伝統工芸の技術を受け継ぐ次世代の職人を育て、世に輩出するサポートをする「地方独立行政法人 京都市産業技術研究所」
産技研では研究をベースにした技術指導により、京都の中小企業はじめとする事業者のサポートを行っています。伝統工芸の分野においても専門の研究員がおり、今でも脈々とその知識と技術、研究成果のデータが受け継がれています。また、京都の伝統産業である「西陣織」「京友禅」「陶磁器(京焼・清水焼)」「漆工(京漆器)」の担い手を養成する各種研修「伝統産業技術後継者育成研修」を実施しており、これまでに約13,000人の修了生を輩出しています。その一分野でもある「陶磁器」は、他にも学べる機関がある中で、当研究所の研修が選ばれる一番の理由は”釉薬”についてのノウハウをはじめ、多種多様な陶磁器に関する技術について学ぶことができることです。釉薬というのは、陶磁器の表面を覆うガラス質や結晶質のことですが、それらの資料であるテストピースを素地や上絵具等も含め、データとともに豊富に取り揃えています。
研究から得られる科学的知見に基づいた最新の技術を研修に反映させる、そこから学び、卓越した技術を持って世に出る、それが研修修了生の強みとなることを目指しています。
http://tc-kyoto.or.jp
- 会期中、展示作品は購入も可能!
会期中、京都伝統産業ミュージアムショップでは、伝統産業の担い手たちの作品を販売します。展覧会で紹介する陶磁器作家の作品も一部販売しますので、展覧会で陶磁器の魅力を再発見した後は、渾身の作品をお手に取ってご覧ください。
また、2022年11月1日〜2023年3月31日までの期間「MOCAD ONLINE SHOP」でも商品を販売します。みなさんの生活を彩る可愛い作品をお気に入りの仲間に入れてもらえると嬉しいです。
特集ページ:https://mocad-shop.com/collections/test-piece
京都市産業技術研究所の釉薬研究とそれを学ぶ京焼・清水焼の若手職人たちのものづくりへの挑戦を紹介する展覧会「テストピース ~感性とサイエンスが繋ぐものづくり~」を京都伝統産業ミュージアムにて開催|株式会社京都産業振興センター