【アキヤリノバコラム】一人一軒!第9話 生産緑地問題ってなんですか?「農林業で使ってる土地の税金…」「住宅用地として売ることが…」#2022年問題 #生産緑地問題

2022年春、気温の上下でなかなかつらい日々が続きます。寒かったり暑かったり極端です。
これを一部では「令和ちゃん(4歳)のエアコン遊び」と命名し、令和ちゃんが温度調節覚えるまでは優しく見守ろうというムーブメントだったのですが、限界に近づいており難しいですよね、という状況です。

さておき、今年に入ってからはどこでも「2022年生産緑地問題」というのが取り沙汰されています。

ざっくり概要を説明しますと、過去に設定された「農林業で使ってる土地の税金だけど、特定のエリアの場合は激安にする代わりに農林業がんばってね」というものですが、その支援が2022年で解除されるため、「都市部に近い農地が住宅用になって空き家相場とか大変なことになるかも?」と懸念されているのが”問題点”です。

アキヤリノバでも2022年問題には「一人一件」2回めで軽く触れましたが、この問題に対して空き家を持っている、もしくは空き家を探している人に影響がどれぐらいあるのかを今回、コラムとして扱っていきます。

旬の情報なので旬のうちに、というわけで「観測するならアキヤリノバ読んだほうが早いじゃないですかー」と感じていただけることを目的に、説明させて頂きますのでお付き合いください。

目次 [非表示]

生産緑地の問題と、空き家界隈への影響

改めて、詳細な情報を前提として説明しますので、問題点を把握しましょう。

1:市街地区域にある農地や山林を持っている農家は30年間維持することで税を大幅に軽減されたが、それが1992年に制定されたので、2022年の今年に期限が切れる

2:税の軽減が外れる代わりに、住宅用地として売ることが可能になった

3:そのためにマンションや住宅が新しく建ち、中古物件である空き家の価値が下がる可能性が懸念されている

この3項目を念頭においてください。

ここが空き家業界では懸念されていたのですが、結論から言うと「2022年5月時点で大きな変化はないので気にしなくて良い」となります。

なので安心していただくために「2022問題はこういう状況ですよ」を解説していきます。

そもそも条件がすごく限定的な話

2021年末時点で土地を保有している方向けにアンケートを取った結果、9割の方が「生産緑地? なにそれ?」というぐらい、問題というほどの話題ではありませんでした。

なぜ不動産業界で問題! と言っているレベルのことがほとんど認知されていない状況かというと、大前提として「対象のエリアや地主さんが少ない」のです。

生産緑地は大都市の開発されていないエリアが90%を占めています。たとえば東京都であれば練馬や八王子などをイメージしていただければ「なるほど都市エリアだけど緑地だわ」という理解がしやすいでしょう。こういう土地が今回の問題になっています。

この生産緑地に指定されるエリアは東名阪のエリアに集中しており、その上で土地として今回、問題に該当するのは全国の取引されている土地のうち5%に過ぎません。

なので説明や対応に関しての説明はしていきますが、該当しない皆様は「ここから面白い話が聞けますよ」というスタンスでお楽しみください。

生産緑地を持っている場合の、喫緊で考えないといけない問題

生産緑地の所有者は支援制度が消えるにあたり、いくつかの選択を迫られます。

1:農地として使用、もしくは貸し出すことで軽減税率を確保できるが、一定期間解除できず、農地以外に使えない
(自分の農地であれば基本10年、貸し出す場合は5年以内)

2:生産緑地自体が自治体との契約で成立しているため、解約して自治体に住宅用地として買い取ってもらう

3:解約して自身の資産として維持する

1の場合は自身で農業を継続するパターンが主眼に置かれていますが、高齢化により従事できない場合は他の農家さんに土地を貸し出す、もしくは自治体などで農家を体験できる場所としての「場の提供」ということで減免措置が継続できます。

法が改正されており、以前は「農地は農地!」という決まりだったのですが、現在は「農地の作物を売ったり、収穫したものを使ったレストランとかも作って大丈夫ですよ」というように地産地消を主な目的として、農地の使い方の自由度がアップしているので、アピールできる作物があればかなり魅力的な手段です。

一方で体験農業などの場として自治体への協力をしますとなると、縛りとして「公共の体験ができる場として使われるので、儲けを出してはいけない」条件が加わります。維持費のコストは抑えられても、土地を使われて農家への勉強や体験会という名目で公共性を求められてしまうのは悩みどころです。

どちらにせよ「生産緑地を続けるなら、講習を受けなければならない」「書類の提出が必要」「市区町村長の許可がいる」など手続きが煩雑なため、各自治体も講習の回数を増やすなど対応に追われています。

10年間の延長で10年後に再延長も可能、相続される場合などは途中で解除から売却も可能です。しかし今の時点で「農地ではなく解約して自治体に買い取ってもらう」という契約解除の方もいるのですが、現状では自治体にそこまで予算がないこともあり、スムーズに買い取りが進んでいない状況です。

売れない場合、いきなり税負担が上がるのでは? という部分に関しては、2割、4割、6割といったように5年間を目処に段階的に税が上がっていくという処置になっているので、地主的には「周囲の開発状況などを伺いつつ、ベストのタイミングで売りたい」という気持ちなので、空き家に関してもいきなり価値が低下したり、条件がゆるくなったりもしないのです。

注目したい今後の動き

空き家に関連する動向として、今すぐの影響はないとしても、今後5年の間で予想できる変動にかかわることをお伝えしていきます。

読む方にとっては当たり前かもしれませんが、すり合わせも含めて、情報を確認していきましょう。

開発の予定がある

指定されている地域に関しては「生産緑地ですよ」というのを掲示することが義務付けられていますので、動きがあるとしたらこちらの資料(pdf)からより「東名阪の自治体が管理下にある生産緑地」を見てみましょう。ここに名前がないエリアは除外して良いわけです。

千葉をサンプルにすると、東京に隣接しているベッドタウンであり、大規模遊園地と工業が柱となっている浦安は1979年の時点で農地が無くなっているため、生産力を保持していない保持していないためカッコで区別され、除外されています。

該当エリアで情報を集め、「開発される予定があるエリアでは生産緑地が5年ぐらいの推移で住宅に変わるかも」ぐらいでチェックしておきましょう。

開発された時点で新築が増えるとそちらに需要が集まるように感じられるかもしれませんが、エリアごと価値が上がれば「新築は手が出ないけど空き家なら手が届くかも」という形で、自然と空き家の価値もアップしますので、むしろ好材料になります。

戸建てのほうが望まれている傾向がある

不動産側の傾向ですが、広い土地があってもマンションを建てるのではなく戸建てのほうが期待されているため、まず中古マンション自体は影響がないと考えて下さい。その上で戸建てを新築で選ぶか、中古を選ぶかは需要がだいぶ異なるため、一斉に家が建ったから不利になる、とは考えにくい状況です。

災害に対して強いエリアかどうか

そのエリアが災害に対して強いかどうかも、生産緑地の売却傾向に関わってきます。災害に弱いという情報があるエリアでは、土地が売りに出され新築になり、建物が災害対策をしている、という最新の施工をされると大幅に価値が上がることは予想されますが、前提的に「弱い土地に強い建物で対抗できるのか」という問題もあるわけです。

災害に強い! と断定できるエリアの情報があったからといって「すぐ売ります、新築を建てます」は起きにくく、対抗手段として空き家があるのならリフォームして災害対策をすれば十分に魅力のある空き家ができます。

周辺の人口増減に注目

どのエリアでも同じことがいえますが、少子高齢化となっていく以上、人口の増減はダイレクトに自治体の強さを変えてしまいます。これに関しては自治体が対策するかどうかや前述したエリアの開発など、抜本的な変化がない限りは低下していくので、新規で土地が出来たからといっても建てずに保有しておくパターンが予想されるのです。

生産緑地該当者は何をすれば良い?

レアケースかと思いますが、読者の方で該当する生産緑地をお持ちの方むけに加筆します。

どのように生産緑地を使うかは、以下の目的ごとに変わることを覚えておきましょう。

生産緑地として継続する

自身で農業をする、もしくは営利目的の農地として貸し出すことで農業を継続する場合は、10年単位での更新が必要になります。どちらの場合でも農地に販売施設、加工施設を建てることが出来ますが、自治体の該当部署に「どのように使うのか」を申請する必要があります。

なお持ち主が10年以内に亡くなってしまい、相続人の手に渡った時点で持ち主が「農業の継続」「売却」「土地として保持」を選択できます。

貸し農園、市民農園などのレンタル

前述の通り、利益を出せないという前提ではあるものの、土地を維持して節税したいのであれば農園を貸し出すことも考えていいでしょう。

ただし「特定農地貸付法」に従う必要があるため、開設するには各自治体の農業委員会の承認が必要になります。

売却したい

買い取りを希望する方も、自治体に買い取り申請するために問い合わせが必須になります。住宅用の土地として建物も建てた上で売る場合は、まず建設する時点で条件に応じた許可が必要なので、自治体と不動産のプロに尋ねることをおすすめします。

まとめ

以下の点を守れば、問題は起きません。

・まずは生産緑地に該当するか問い合わせ

生産緑地として指定されていれば何らかのデータがあるはずなので、自治体に問い合わせしましょう。

・該当する土地なら不動産と相談

買取価格の見積もり、自治体との対応、住宅用地にするか農地のままかに関係なく、一度不動産会社に相談しましょう。

・該当していても地方なら焦って売らなくて良い(影響がないため)

相談でおそらく解決しますが、焦らないことが何より大事です。東名阪以外の該当地域はもちろん、それ以外で生産緑地であれば、ほぼ影響がないのでゆっくり行く先を考えましょう。

ちなみに生産緑地のアンケートとして、売りたい方は4割ですが、悩んでいる人が大多数なので、即時の問題はないといえます。

・開発などの情報を確認して、新規で建てるエリアは逆説的に中古を手に入れやすくなるから買う側としては情報を洗っておきたい

新規物件が出ることで近くの空き家が値下がりする可能性は考えられるので、すぐに見つけるというよりは情報収集として、該当エリアの価格はリサーチしておくと掘り出し物があるかもしれません。

より良いときに売れるかどうか、は今回の問題にかかわらず必要なので、いいきっかけができたと思いながら、変動を確認したいところです。

ちなみに農地の貸出に関しては、自治体のもとで契約されているルールになっているので、貸す側と借りる側の合意がなければ解消はできません。

巷では「この農地を買い取らないのならばこの期間で更地にして返却しろ」というトラブルも起きているようですが、個人間でのトラブルにならないように、自治体を挟むことをおすすめします。

文/構成:鶴岡八幡

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