京都市の街角に静かに佇む空き家たちが、再び人々の暖かな笑顔で満たされる日が近づいています。NPO法人321プロジェクトが進行する「リセットハウスプロジェクト」により、これらの空き家は経済的弱者やケアリーバー(児童養護施設や里親などの社会的養護から離れた子ども・若者)の新たな生活の舞台となります。
このプロジェクトは、社会課題の解決と移住・定住の促進を独特な方法で進行します。まず、入居者に対し、ライフプランニングや教育を通じて、退去時には自己の所得を増加させるスキルと自信を与えることを目指します。これは、空き家をただ提供するだけではなく、入居者自身が自立した生活を送れるようにするという、より深い意味での再生を目指しています。
空き家の活用、ケアリーバーの支援、そして将来の社会保障費用削減という三つの社会課題に取り組む一方、京都市とその魅力を発信し、より多くの人々にこの古都での新生活を考えてもらうことも目標にしています。
リセットハウスプロジェクトのシンボルマークには、家の中に新芽のリボンを入れたイメージがあります。それは、空き家も人も再生し、整えられ、社会に向けて一歩を踏み出すという、このプロジェクトの意義を象徴しています。
この取り組みは、京都市生まれで公営住宅で育った経験を持つ321プロジェクトのメンバーの構想から生まれました。彼らは、隣人が反社会的勢力であり、生活環境が不安定だった子供時代を過ごした経験から、「夢を描き、自分の人生を生きるため」には安定した生活の土台が欠かせないという信念を持っています。
321プロジェクトはこれまでにも様々な活動を行ってきました。2022年11月には群馬県富岡市のとみおか製糸場で150周年を祝う手作りのイベントを開催しました。また、2022年3月には、五代目桂三木助さんと共に笑いと学びの時間を提供するイベントを東京都多摩市で行いました。
彼らの活動は、子供たちに特別な体験を提供することもあります。2021年7月には、航空写真家のチャーリー古庄さんと協力し、京都市伏見区の児童福祉施設の子供たちを空の旅へと誘いました。また、2021年3月には「命はデザインではなく、アートだっ」というオンラインイベントを開催し、新しい視点を提供しました。
これらの活動を通じて、321プロジェクトは「ささいなことで人生は変わる」という信念を具現化しています。そして、それが今回のリセットハウスプロジェクトへと結実し、京都の空き家が新しい生活の舞台として再生されるというビジョンを持っています。
このプロジェクトは、クラウドファンディングを通じて家電の調達を行う予定であり、その資金の透明性と社会性を確保するために、2024年に認定NPO法人化を目指しています。
京都市移住・定住応援団としての認定を受けている321プロジェクトは、その活動を通じて、空き家のオーナーや空き家新税対策を考えている人々に対し、入居者にとって有益な情報を提供できる存在となり、京都の魅力をより多くの人々に伝える役割を果たしていくことでしょう。