現在ご実家やご兄弟など、親族が住まわれていた「空き家」の問題に頭を抱えていませんか。空き家は資産運用する動きが活発化しており、物件を賃貸化したり、民泊向けに改築したりする事例も増加しています。しかし、すべての空き家が資産運用に活用できるわけではありません。建物にダメージが進行している、暮らしにくい場所に立地している場合は思うように売却も進みません。では、維持が難しく売却も難航している空き家を解体する場合、費用はどうすればいいのでしょうか。空き家の解体費用に悩んでいる方向けに、本記事では「補助金制度」について紹介します。あわせて、相続時の注意点にも触れますので、ぜひご一読ください。
空き家を解体する際に知っておきたい2つのこと
賃貸化も売却も難しい空き家を抱えている方は、「解体」を模索しているのではないでしょうか。しかし、解体をする場合には解体費用が発生してしまうため、所有者にとっては重い負担です。建物や土地は資産であり、本来なら資産活用に転用したいところです。しかし、住みにくい場所であったり建物の老朽化が進んでいる場合には、どうしても解体せざるを得ないケースもあります。そこで、解体を決める場合には、以下2つのポイントを押さえておきましょう。
1.解体方法を知っておくこと
空き家の解体には色んな方法があります。
・建物をすべて解体し、更地化する
・建物を部分的に解体し、一部を残存させる
・内装だけを解体する
・庭や塀など、老朽化している外装部分だけを解体する
いかがでしょうか、「解体」とひと言で言っても色んな解体方法があります。建物を全て解体し、更地にすると土地を売却しやすくなりますが、解体費用は高額になる場合もあります。老朽化だけしている部分を解体すれば、残存させる部分を資産化できる可能性があります。内装や外装だけを解体し、リフォームをすればユニークな使い方が模索できるかもしれません。このように、解体の方法によっては解体費用の支出を上回る資産運用ができる可能性があります。
2.解体費用には補助金が用意されていることも
空き家の解体を検討している方は、解体費用の支出に悩んでいます。しかし、地域によっては空き家問題の解消に向けて、自治体が「補助金」を用意していることをご存知でしょうか。1で述べたように、解体方法と補助金を賢く活用すれば、費用という重い課題をクリアできるかもしれません。そこで、次に解体費用の補助金制度について紹介します。
解体費用には補助金制度を活用しよう!
すでに当サイトの記事でも解説していますが、空き家は自治体にとって深刻な問題です。自治体は固定資産税に関する調査や相続人の特定、空き家の近隣住人からの苦情対応などに向き合っており、自治体独自の条例を制定するなどの方法で空き家問題全般の早期解決に力を入れています。
参考URL アキヤリノバコラム 「空き家の放置はデメリットだらけ!「空き家の管理責任」とは?管理不全の空き家にはどんなリスクがある?」
解体費用に関する補助金制度もこうした自治体側の事情があります。空き家問題を解決しようと解体を決めた所有者などに、補助金をくれるのです。では、実際にはどんな補助金があるのでしょうか。例として、富山県魚津市の補助金を紹介します。
富山県魚津市の補助金のしくみ
蜃気楼が見える街として知られている富山県魚津市では、「危険老朽空家の解体支援(補助金)」というしくみを用意しています。このしくみは、「市内にある個人の一戸建ての居住用空家で、長期にわたり使用されていないもの(附属建物は除く)」などの条件を満たしていれば、解体時に補助金が支払われるものです。補助金の額は、空き家の解体工事費の3分の1(千円以下切り捨て)とし、最大で50万円を上限としています。但し、市に本人及び同居のご親族が滞納税がある場合には対象外です。
全国で色んな自治体が解体に関する補助金制度を設けていますが、滞納税があると対象外となるケースが多いため、ご注意ください。補助金の金額や申請方法、制度の有無は各自治体によって大きく異なるため、解体検討時にはお問い合わせされることがおすすめです。賢く活用し、解体費用へ生かしましょう。(自治体によっては助成金制度の場合もあります。)
参考URL 富山県魚津市 「危険老朽空家の解体支援(補助金)」
解体を決める前に|単純承認と相続放棄のしくみ
空き家の放置は倒壊リスクなどのトラブルが予想されるため、売却にしろ解体にしろ、早めの解決が望ましいでしょう。しかし、ここで1つ知っておきたい事があります。空き家問題の多くは「相続時」に発生しています。空き家の処分に困る、借金の発覚などの理由で、相続をせずに「相続放棄」するケースも多いのです。
不要な空き家や債務(ローンの残債など)がプラスの資産よりも多い場合には、相続放棄を検討することが可能です。しかし、相続人(相続する方)が相続放棄をすると、被相続人(亡くなった方)が遺した空き家の解体ができません。なぜ、被相続人の財産を相続放棄すると、相続財産である空き家を解体できなくなるのでしょうか。
■相続放棄をすると、なぜ空き家を解体できない?
相続放棄は被相続人が亡くなった日、もしくは自身の相続の開始を知ってから3か月以内に手続きを行う必要があります。しかし、3か月以内に被相続人の財産を使う、処分した場合には、相続放棄ができません。単純承認した、とみなすためです。被相続人の財産を動かしてしまうと、相続をしたとみなすのです。(なお、相続放棄手続きをしないと3か月以降は単純承認をしたとみなします。相続放棄手続きが遅れそうな場合には、裁判所に相談しましょう。申述期間伸長という手続きがあります。)
つまり、相続放棄をしたいなら、「相続開始~相続放棄までの間」に、空き家を解体することはできません。相続放棄後は、別の相続人が空き家を相続する必要があります。相続人全員が放棄する場合は、民法299条第2項により「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」ことになります。しかし、空き家の管理責任は相続放棄後も空き家の管理義務は残されます。放置空き家の責任を取らなければいけなくなるため、裁判所に相続財産管理人の選任申立てを行う必要が生じるのです。
相続放棄はご自身で手続きが可能ですが、法律を正しく知った上で手続きを行わなければ、相続放棄ができなくなったり空き家の管理責任を問われる可能性があります。法律家に相談の上で期限を順守しながら進めることがおすすめです。
まとめ
この記事では、空き家を解体する前に知っておきたい「補助金制度」について、富山県魚津市を事例に詳しく解説しました。空き家の解体の前には、自治体にお得な補助金制度(助成金制度)は無いか、ご確認されることがおすすめです。賢く活用して、空き家問題をクリアにしましょう。
被相続人が遺した空き家を相続放棄する場合には、空き家の取り扱いに注意があります。取り扱い方を誤ると単純承認とみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。相続財産管理人の申立てが必要となるケースもあるため、空き家のある相続放棄は法律家に相談しながら慎重に進めましょう。