ESSEオンラインでの人気連載が一冊に。
2021年から東京と愛媛の二拠点生活を始め、東京では作家として、愛媛ではお百姓としての日々を送っている高橋久美子さん。「祖父の残してくれたみかん畑を守りたい」と、15年過ごした東京から離れることを決意。18歳まで過ごした故郷・愛媛での暮らしはいろんな発見や感動に満ちていると語る。
- 東京生活15年、ようやくたどり着いた理想の暮らし
朝5時半、みかん畑に到着。夏の朝、ってこんなに気持ちがいいんだなあ。まだ太陽は優しくて土は朝露で湿り気があり、生まれたての地球だ。大きく深呼吸をして、私は草刈り機のエンジンをかけ、木のように伸びてしまったツタを刈っていく。みるみるうちに長袖シャツは汗だくだ。
6時半、休憩。畦道に座って握ってきたおにぎりを食べる。木陰は風が抜けてなんと気持ちがいいことだろう。二拠点生活をする前まではどちらかというと、夜型の生活をしてきていた。田舎育ちだが、朝がこんな清らかな表情をしていることを知らなかった。夏の朝は気持ちがいいんだなあ。すごく得した気分。自然の中で食べる朝ごはんのおいしさといったらない。鳥がさえずり、朝でもヒグラシが鳴き、川のせせらぎ、風が木々を通り抜ける音。とてもいい時間だ。(第5章「夏の朝活!」より)
古い一軒家に住み、手作り野菜で四季を楽しむ自給自足の生活や、ご近所さんとの交流、二拠点生活のことなど……等身大の暮らしぶりがたっぷり詰まっています。
●はじめにより
みなさんの、そして私自身の生活が少しでも気楽に楽しくなったらいいなと思いながらESSEオンラインで連載をし、一冊にまとめることができました。「暮らしっく」というタイトルは、“暮らし”と“クラシック”をかけ合わせた言葉です。40年生きてきて、そのうちの 15年以上を東京で暮らしてきましたが、日に日にクラシック(古風)な生活に戻ってきました。そこには実家の愛媛で過ごした18歳までの暮らしの豊かさに気づいた自分がいたのです。
ここに書かれているのは、生活者の一人としての、私の日常や気づきです。普段は作家をしているので、家は相棒。家事で工夫していることや、節約していること、二拠点生活中の愛媛での暮らし等をご紹介します。
できるだけ楽しく、できるだけゆるく、自分を活かせるように暮らせたら幸せだなと思います。参考にしてもらえたら嬉しいですし、こんな生活の人もいるのだな、私は私でいこうと、お隣の家をのぞくような気持ちで読んでもらえたらと思います。