現時点ですでに空き家をお持ちの方は体験済みかもしれませんが、空き家とセットになる「終活」に焦点を当てて、いかに攻略すると楽になるかを体験談からお伝えいたします。
高齢者と一言でくくるには各個人の健康状態や暮らしている状況、ケアマネージャーやヘルパーなど自治体との連係した介護の有無など、違いがたくさんあります。
なので今回の記事では「相続予定の建物に高齢の権利者が住んでいる」前提で「何らかの持病の有無」「介護を誰が担当するか」「生前にできること」という要素についてお話していきましょう。
目次 [非表示]
- 健康なら65歳から、疾病があればそのまえに「介護保険」のお世話になる
- 定期的通院のススメ
- 遠距離介護と近距離介護の違いとオススメするライフスタイル
- 介護に便利だが後で扱いに困るものをどうするか
- 生前贈与で相続税は軽減できるのか
- 相続しないほうが良いパターン
- まとめ
健康なら65歳から、疾病があればそのまえに「介護保険」のお世話になる
令和4年の時点で、厚生労働省が最新情報(令和3年版)を発表していますが、介護保険制度というものがあります。
簡単にまとめると、収入に応じて負担額が1割~3割ほどかかりますが、支払われる年金から負担額を天引きする形で高齢者のサポートをしてくれるというシステムです。
高齢者の方が住んでいらっしゃる市区町村にある地域包括センターや、エリア内で福祉サービスを担当するケアマネージャー、実際に自宅に来て介護やお手伝いをしてくれる訪問ヘルパーさんが所属するサービスセンターが連係して、助けてくれます。
最初に福祉課の方へ連絡すると、ケアマネージャーさんがヒアリングしたうえで介護度を認定し、どのレベルの生活ができるのかによってサービス時間の長さや日数、介助してくれる内容を決定してサービスセンターと共有したうえでヘルパーさんが動くことになります。
遠距離に住んでいる場合は先に申し込み手続きだけを済ませて、ケアマネージャーさんが設定するプランに関して内容を、ご本人と一緒に聞いて状況確認をした上でサービスを始めるといいです。
だいたいのプランは「自分で生活はできるが補助してもらえると楽になる」ぐらいからスタートしますので、ご本人との電話だけではなくケアマネージャーさんとヘルパーさんには情報を共有してもらえる方法を提案しておくといいでしょう。とくにヘルパーさんは直接ご本人を診ていただくので、レポートとして情報を貰えるか相談することをオススメします。
ただし注意しなければいけないのは、ヘルパーさんは所属している会社のスタッフさんであり、介護に関しての変更や改善はケアマネージャーさんから指示がなければ対応することができません。介護を受けるご本人ともお話をして、より良い生活を送れるようにしましょう。
定期的通院のススメ
持病が無い方は半年に1度、ないしは1年に1度は全身くまなく健康診断でチェックしてください。先んじて疾病が解ってると、対応がしやすいです。
また心臓を始めとした内蔵、脳の血管系などで過去に病歴がある方は、持病があるという前提で定期的に検査しておきましょう。
特に注意すべきは腎臓の機能とカリウムのバランスです。高カリウム血症というものが発生すると、カリウムの値で腎臓の機能が低下し、それがそのまま心臓の活動低下につながるため、食事制限を余儀なくされます。簡単に言うと、この数値を守らないとすぐ亡くなるのです。
このレベルに到達すると人工透析が必要になり、週3ペースで1回3時間の透析をしなくてはいけない生活になるので、ほぼ通院のために人生を使うため、かなりオススメできません。
逆説的に、持病で血液検査やレントゲン、心電図を定期的に確認するレベルになったら「終活」が始まると思って、前回の記事にあるように準備を進めましょう。
遠距離介護と近距離介護の違いとオススメするライフスタイル
遠距離で暮らしているばあいは介護制度を利用して見守ってもらうことになりますが、飛行機を使う場合は介護認定されていることを条件に介護割引が使えるので、駆けつける必要がある時は利用してください。
同居、ないし近くで暮らしての介護の際も、基本は自身でできることをやってもらい、介助が必要な状況のみ手伝うという形にしないと老化が進みます。
自身が高齢者の介護に関わると時間や体力、精神力を取られがちなので、ケアマネージャーと綿密に相談してできる限り自治体のサービスを使うようにしましょう。
そのうえで、24時間レベルで介助や見守りが必要な状況が必ず来ますので、その前に介護サービスが充実している高齢者施設への入所を申し込んでください。
これらの施設はまず施設の内見とサービスの説明があり、その上で「個室があるか」「トイレは各部屋にあるか」「テレビだけでなくWi-Fiなどがあるか」といった施設ごとの機能を確認してから申し込み、施設側が介護できるレベルかどうかを判断して、OKが出て初めて入所できます。
人気の施設は順番待ちがあることもザラにあるので、早めに申請しておくのがポイントです。施設に持ち込める荷物は制限があるので、申請が通った時点である程度の大きさの収納ボックスを用意し、本人が家から持っていきたいものを選んでもらうことで、入所後に家を空けるタスクが実行できます。
介護する家族のコンディションと、空き家として登録するための準備のためにも、介護はプロに任せるというマインドを重視してください。
介護に便利だが後で扱いに困るものをどうするか
高齢者で介護が必要になった場合は、いざというときのために備えながら終活を進めていくのがベストなのですが、このときに「あると便利でその後困らない小技」を経験から得たので、共有しておきます。
まずベッドなどに関しては過ごしやすく、なおかつ機能性の高いものとして、「体を起こしやすい」「清潔さを保ちやすい」などの観点から、医療用の介護ベッドを使うとQoLがアップします。普通のベッドは機能的でないことと、使わなくなったときの廃棄と搬出が一人では不可能だと思われるので、介護ベッドをケアマネージャーに相談してレンタルするのがベストです。使わなくなったら返却するだけなので、セッティングと撤収は業者さんがしてくれるのも助かります。
ちなみにベッドを購入することもできますが、耐用年数は約8年を想定されており、価格は10万円前後です。レンタルだとメンテナンスも任せられるのと、介護保険が適用されると最大でも月8000円の費用の3割になるので、2400*12で年28800円はだいぶお値打ち価格といえます。
基本的に自分の足で歩かないと劣化しますが、加齢や容態によっては歩くのが疲れるという方も多いので、車椅子を置いておくと便利です。こちらも購入するよりはレンタル(月1000円ほど)のほうがメンテナンスの部分も含めて安心して使えます。空気入れだけはこまめにつかうので、安いものを買っておきましょう。
お年寄りになって割と必要になりがちなのが酸素吸入なのですが、血中酸素濃度を維持して状態を安定させるためには、コロナでものすごく知名度の上がったパルスオキシメーターという測定器が必要になり、自身の状態を調べながら酸素の濃度を調整することが大事になります。
なので医師の診断で在宅と移動時に酸素の吸入が必要になった場合は、酸素を発生させる在宅用の機械と、移動時にキャスターで転がしながら運ぶ酸素ボンベが必要になります。酸素に関しては専門の業者さんが取り扱っているので、在宅用の機械と持ち運べる吸入器はレンタル、ボンベは残量が少なくなったら交換、という感じで用意しましょう。
注意が必要な点としては月額の費用が高くなるので障害者手帳などを利用して軽減化することと、ヘルパーさんが触れることができない医療行為に当たるので、看護師さんか高齢者本人が管理しないといけません。
パルスオキシメーターはレンタルするよりも、安いものを買ったほうがコストがかからないのでおすすめです。なぜ安いものを買うかというと、性能の差が殆どないことと、高いものを買ったとして使わなくなったときに中古で引き取ってもらうには「医療器具の中古取り扱い」資格がないと買い取れないのでかんたんに売ることができず、しかも引取の値段は1/10くらい(実数で2万円のものが2000円での買取提示)になるので、あまりにも無駄なのです。
ちなみに血圧計も安いものをおすすめしますが、手首などで測るタイプは数値が正しく出ないので、上腕部で測れるタイプにしましょう。
生前贈与で相続税は軽減できるのか
生前贈与をすると節税できる、というシステムを聞いたことがあるかもしれませんが、かなり細かい条件をクリアしないと節税効果は望めません。
また相続税が発生する3年前までの贈与は相続税の範疇としてカウントされてしまうことも覚えておきましょう。
基本的な問題として生前贈与は税務署の許可などが必要で、長い期間贈与していると「これはアウトです」ということで税が加算されたりもします。
オススメするのは「生前贈与は自由に相手を決めて渡せる」という部分を活かして、価値のあるものを先に渡しておく方法です。
なお空き家の生前贈与に関しては「家を建てる/増築する」などが条件に含まれるので、計画的にプランを練るべきです。
これに関しては法的な手続きが必要になるので、弁護士などに相談して、税に関しての知識を助けてもらうほうがいいでしょう。
相続しないほうが良いパターン
集合住宅/一軒家を問わず、資産として空き家を相続すると、算出される建物と土地の価格から割り出して、値段ごとに税率が変わります。
相続する場合は個人名義で相続し、手続きをするほうがいいです。複数人名義だと、その分税金が増える場合があるためです。
また事前に価格などの計算をしておかないと、相続できるのが持ち主が亡くなってから10ヶ月と決まっているため、時間が足りない可能性があります。
単純に資産が沢山あるのであれば、税を払って相続、でいいのですが、負債や必要のないものも含めて相続が発生するので、プラスマイナスの計算が大事です。
なぜなら「この分は相続するけど、ここ部分は放棄します」という部分放棄が不可能なため、全部抱えるか、全部捨てるかしかないのです。
実例を踏まえますと、山などの土地権利を遺族が持っており、相続するとします。不動産的に山というのは扱いに困るもので、たとえば新幹線が通るような場所なら買い取られる可能性があるのですが、僻地の山奥を渡されても「建てられない」「収穫物もない」「地価も安い」「管理費だけはかかる」など割と困る代物になるのです。
負債と違ってプラスではあるので、生前の贈与という手段でも対応できますが、受けてくれる人を先に見つけておく必要があるので、これも法律相談などで確認しましょう。
極端に債務が多い場合や遺族で相続の権利を持っている方が多い場合は揉め事にもなりやすいため、生前に贈与しなくても、遺言として誰が受け取るかに関しては決めておくことをオススメします。
まとめ
正直、高齢者で心臓に関連する持病を持っている場合、なんらかの具合が悪くなったときに連動して急死、というパターンもあります。
これに関しては「生き死にに関わるような食事制限や栄養制限が出た場合は、絶対急死する」ぐらいの気持ちで進めていたほうが安全です。
空き家が生まれる以上は住人がいなくなる、という前提で無ければ話が進まないため、「転ばぬ先の杖」として記事を書かせていただきました。
穏やかな終活を迎えるためにも、生前に手配をしておくことを、改めてお伝え致します。
■文/編集:鶴岡八幡
※追記(2022/04/13)
文中に不備があったため修正いたしました。